今回ご紹介するのは、40代のバレエ教師 Yさんです。
Yさんは、アキレス腱断裂の手術をして1年半経過していましたが、まだルルベができませんでした。
術後1年半経過しているのにルルべができなかったのは、体調不良などでレッスンやトレーニングを数カ月できない期間が2回もあり、順調に回復できなかったからです。
Yさんは、バレエでの舞台復帰を目標に、昨年の9月から当院の運動指導に通い始めました。
初診時、Yさんの足関節・足部の関節可動域には、左右差はほぼありませんでした。
しかし、足関節・足部の筋力は、右足は左足の70~80%程度でした。
また、アキレス腱周囲やふくらはぎの筋群に硬結や滑走不全がありました。
通常は、近所の医療機関へ通院し、当院へは2~3週間に一回のペースで来院してもらいました。
Yさんはバレエレッスンやトレーニングなどを積極的に実行し、12月頃から少しずつルルベができるようになってきました。
先日、術後約2年、当院での運動指導を始めて5カ月後に写真と動画を撮らせて頂きました。
①②③④⑤Yさんの足は、足関節・足部の可動域が大きく、甲がよく出るタイプの足です。
バレエ愛好者の誰もが憧れるような美しい足を持っています。
しかし・・・
★足関節・足部の可動域が大きく、甲がよく出るタイプの足は、コントロールが難しい場合があるのです。
★関節弛緩性が高い(関節が柔らかすぎる)スポーツ選手やダンサーが、体幹や股関節や膝をコントロールするのが難しいのと一緒です。
Yさんの足関節・足部の筋力は、昨年の9月には右足は左足の70~80%程度でしたが、5カ月後の2月には逆に右足の方が若干強くなっていました。
ところが・・・
床を押しながらルルベをしていくと、ドミポアント(2分の1ルルべ)までしかできません。
Yさんの足関節には可動域制限がありません。むしろ甲が出過ぎるくらいの足ですので、プリエで勢いを付ければ4分の3ポアント、フルポアントの位置に立つことはできます。
しかし、それをキープする筋力がまだありません。そして、ルルべからアテールに戻るときは、途中のコントロールができないためドスンと落ちてしまうのです。
★ライズアップするときも、ライズダウンするときも、途中のコントロールができない状態なのです。
これは、足関節捻挫のリスクがとても高い状態なのです。
アキレス腱断裂からの回復期に、足関節捻挫をしてしまうことは、臨床で多く見かけます。
Yさんは、現在、夏の舞台復帰に向けてレッスンやトレーニングを行っていますので、足関節捻挫などのアクシデントは絶対に回避したいのです。
こちらは、5カ月後のかかと付けルルベをしているとこです。(スマホの方は、URLをクリックしてください)
https://www.youtube.com/watch?v=qroqurn1cfs&feature=youtu.be
https://www.youtube.com/watch?v=13KvvpFfDv0&feature=youtu.be
足裏でゆっくりと床を押していくと、右足は半分までしかルルベができません。
そのため、左足はバランスのよい位置を探しながらグラグラしています。
ふくらはぎや足関節周囲の筋力は回復しているはずなのに・・・
足裏でゆっくりと床を押していくと、右足は半分までしかルルベができません。
それはなぜなのか!!??
バレエの解剖学を復習してみましょう!!
★下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)は、足首を底屈(ポアントの肢位)にする主動筋です。
★下腿筋後面の深層にある後脛骨筋、長指屈筋、長母指屈筋と、下腿筋外側にある長腓骨筋、短腓骨筋は、
足首を底屈(ポアントの肢位)にする補助筋群です。
★これらの筋群を効率よく使うことによって、距骨を前に押し出し、足首に負担のかからない、
そしてかま足や逆かま足にならないバランスの良いポアントの肢位を作ることができます。
★足の内在筋もバレエでは重要です。
足底筋群は、足首より先の部分にあり、足の甲を出したり、足指を曲げたり、足部全体をすぼめたりします。
また足背の筋群と拮抗させることで、トウシューズで立つときなどの足指をぐっと伸ばすこともします。
★このトウシューズで立つときの、足指を床に突き刺すような力は、
下腿筋後面の深層にある後脛骨筋、長指屈筋、長母指屈筋と、
下腿筋外側にある長腓骨筋、短腓骨筋と、
下腿前面の深層にある長母指伸筋、長指伸筋、
更に足の内在筋と共同して行うことで可能になります。
★下腿の後面や足底筋群と、下腿の前面や足背筋群をバランスよく筋力強化できているとしても、
「主動筋と補助筋群とともに拮抗筋も一緒にバランスよく使う」ということを知らなかったり、
知っていたとしても、うまく使えていない場合も多いのです。
★「主動筋と補助筋群とともに拮抗筋も一緒にバランスよく使う」ことができると、
関節を詰まらせずに、関節に適度な空間を作りながら使うことができます。
それは、しっかりと床を押して、高いルルベができるということであり、
長母趾屈筋腱の腱鞘炎のリスクを下げることができることでもあるのです。
★「主動筋と補助筋群とともに拮抗筋も一緒にバランスよく使う」ことができるようになるためには、骨格が違う各個人の足に合わせたバレエに必要な繊細なコーディネーション力も必要なのです。
解剖の図は、こちらのブログを参考にしてください ↓
(11)「バレエに関係する足部の機能解剖」
http://blog.livedoor.jp/ikejimasekkotuin/archives/5040430.html
(191)「長母趾屈筋腱腱鞘炎のリスク要因」
http://blog.livedoor.jp/ikejimasekkotuin/archives/50875763.html
(14)色々な足 61 (12歳のバレエダンサー)(親指を曲げずに足を伸ばすには、どうしたらよいのか!!??)(バレエに関係する足部の機能解剖 2 )
https://www.ikejimasekkotsuin.jp/column/729/
Yさんは、夏の舞台に向けてバレエレッスンと、リハビリ&トレーニングを熱心にやっています。
足のトレーニングは、こちらを参考にしてください ↓
足のトレーニング総集編(三角骨、長母趾屈筋腱炎・腱鞘炎)
http://blog.livedoor.jp/ikejimasekkotuin/archives/47792766.html
足関節捻挫後のトレーニング(リハビリ)
http://blog.livedoor.jp/ikejimasekkotuin/archives/49979025.html
足のトレーニングに関しては、まだまだ書きたいことがいっぱいあるのですが・・・いつかに続く・・・
Yさんの舞台復帰を、私も心から応援しています!!
いけちゃん
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http://blog.livedoor.jp/ikejimasekkotuin/archives/46271926.html
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